日光・鬼怒川急行のあゆみ

2005年（平成17年）3月1日、会津鉄道の快速「AIZUマウントエクスプレス」（元名鉄特急「北アルプス」号の8500系気動車）が野岩鉄道を経由し念願の東武鉄道鬼怒川温泉への乗り入れを開始することになった。だがその代わり東武鉄道からの野岩・会津鉄道直通急行「南会津」号は東武線内のみの運転とされ（愛称も「ゆのさと」に変更）、1988年（昭和63年）10月以来約16年半続いた直通急行（元快速急行）が消滅することになった。この機会に日光・鬼怒川線系統の急行列車のあゆみを簡単にまとめてみることにした。

姿を消す急行「南会津」 （2003-4　大袋)

• 1988年（昭和63年）8月改正以前の快速急行
  
  快速急行は全て不定期列車（下表の運転本数は時刻表掲載のもののみでこれ以外にも臨時運転あり）。
  
  ※「だいや」は浅草−東武日光間、「おじか」は浅草−鬼怒川線方面の愛称名。この頃の「おじか」は浅草−下今市間は「だいや」と同じダイヤ（!?）で、運転日により行先・愛称を変えていた。
  
  

  	だいや		おじか
  	下り	上り	下り	上り
  不定期	3	5	2	-

  ※「快速急行」という種別であるが急行より格上の列車ではなく快速と伊勢崎線急行「りょうもう」号の中間に位置する列車で、車両も快速と同じ6050系（一部5700系)を使用し快速を全車指定席にしたようなものであった。この他に東武特有の山岳夜行列車として「日光山岳夜行」「尾瀬夜行」「スノーパル」の各列車も種別は快速急行の扱いであった。
  
  
  

• 1988年（昭和63年）8月9日改正

  （竹ノ塚−草加間複々線化による白紙改正。以下かっこ内は各改正の主要点。）
  
  定期快速急行「おじか」２往復（鬼怒川公園発着）・「しもつけ」１往復（東武宇都宮発着）新設。
  
  ※1986年（昭和61年）10月に開業した野岩鉄道はこの頃は利用状況もよく、快速が混雑することから座席指定列車の要望が出されこれに呼応して定期運転の快速急行「おじか」が登場した。ただし野岩鉄道内の交換設備増設が完成するまでは鬼怒川公園止まりとしていた。宇都宮線直通の「しもつけ」は上りは朝、下りは夕方というビジネス志向の列車として登場。

  	だいや		おじか		しもつけ
  	下り	上り	下り	上り	下り	上り
  定期	-	-	2	2	1	1
  不定期	2	4	1	-	-	-

  
  

• 1988年（昭和63年）10月19日改正
  
  野岩鉄道交換設備増強により定期「おじか」２往復を会津高原へ延長。
  
  ※ここに快速急行の乗り入れ運転がスタート。
  　

  会津高原ゆき快速急行「おじか」（右） (1990-6　鬼怒川公園)

  
  

• 1990年（平成2年）9月25日改正
  
  （業平橋駅発着線増設。ビジネスライナー新設。）
  
  「しもつけ」を定期券乗車可能な「ビジネスライナー」とする。
  
  ※この他に伊勢崎線急行「りょうもう」１往復もビジネスライナー化。
  
  
• 1990年（平成2年）10月12日改正
  
  会津鉄道・会津高原−会津田島間電化により定期「おじか」２往復を会津田島へ延長。
  
  ※快速・快速急行の浅草−会津田島間３社直通運転がスタート。
  
  　
• 1991年（平成3年）7月21日改正
  
  快速急行を全て急行に格上げ。
  

  快速急行	「だいや」	→	急行	「きりふり」
  快速急行	「おじか」	→	急行	「南会津」（野岩・会津鉄道直通）
  			急行	「ゆのさと」（鬼怒川線内発着）
  快速急行	「しもつけ」	→	急行	「しもつけ」（愛称変わらず）

  ※快速用6050系で運転していた快速急行は当改正で元「りょうもう」号用1800系を改造した300系（６両編成）・350系（４両編成）に置換えられ急行に格上げされた。これら急行列車には揃いのイラスト入りヘッドマークが用意されたが「しもつけ」だけはビジネスライナーのままで文字主体のマークであった。「南会津」「しもつけ」は運転線区の制約から４連の350系のみ使用、「きりふり」「ゆのさと」は６連の300系を使用（350系代走のこともあり）。

  	きりふり		南会津		ゆのさと		しもつけ
  	下り	上り	下り	上り	下り	上り	下り	上り
  定期	-	-	2	2	-	-	1	1
  不定期	2	4	-	-	1	-	-	-

  　

  		「ビジネスライナー　急行しもつけ」 （1997-2　浅草)

  
  

• 1991年（平成3年）秋以降
  
  新栃木ゆき臨時快速急行「だいや81号」を主に金曜夜に運転（途中栃木のみ停車）。
  
  ※7月改正で消滅したはずの6050系快速急行「だいや」だが以後たびたびこのような臨時列車として登場。
  
  
• 1992年（平成4年）9月21日改正
  
  300系増備により「きりふり」「ゆのさと」増発・定期列車化
  
  ※この改正から1999年（平成11年）3月までが急行の最盛期で４愛称全てが定期列車として運転された。「きりふり」の下り定期列車１本は先の「だいや81号」の格上げで新栃木止まり（1994年8月2日よりビジネスライナー化）。これにより快速急行は山岳夜行列車のみとなる（1996年夏より「日光山岳夜行」は300系使用の急行扱いとなる）。
  　

  	きりふり		南会津		ゆのさと		しもつけ
  	下り	上り	下り	上り	下り	上り	下り	上り
  定期	1	-	2	2	2	2	1	1
  不定期	1	3	-	-	-	-	-	-

  　

  		「ビジネスライナー　急行きりふり」 （1997-2　浅草)

  
  

• 1997年（平成9年）3月25日改正
  
  （草加−越谷間複々線化。下り全優等列車の北千住停車開始。準急の新越谷停車開始。区間準急新設。）

  全優等列車を定期券乗車可能とし「ビジネスライナー」の呼称廃止。「きりふり」が新栃木ゆき１本のみに。
  
  ※従来特急・急行列車は上りのみ北千住停車で下りは全て通過していたがこの改正で北千住駅に優等列車専用ホームが新設されたことから下りも北千住停車とし利用促進が図られた。また全ての列車を定期券乗車可能としたことから区別の必要がなくなり「ビジネスライナー」の呼称も解消した。「しもつけ」については他の急行と同様のイラスト入りヘッドマークがようやく陽の目を見ることになった。

  	きりふり		南会津		ゆのさと		しもつけ
  	下り	上り	下り	上り	下り	上り	下り	上り
  定期	1	-	2	2	2	2	1	1
  不定期	-	-	-	-	-	-	-	-

  　

  「ビジネスライナー」の文字が取れた急行「しもつけ」 （2006-1　春日部)

  
  

• 1999年（平成11年）3月16日改正
  
  （特急「けごん」「きぬ」の一部を春日部停車化。伊勢崎線急行「りょうもう」を特急に格上げ。）
  
  「南会津」の午後の下り１本廃止。「ゆのさと」を不定期化（土休日運転）、上り１本を「きりふり」に変更。
  
  ※「りょうもう」の特急化で急行は300系・350系使用の日光・鬼怒川線系統の列車だけとなった。「南会津」は上下不揃いの本数となりこれ以後急行の削減が続くことになる。
  
  

  	きりふり		南会津		ゆのさと		しもつけ
  	下り	上り	下り	上り	下り	上り	下り	上り
  定期	1	-	1	2	-	-	1	1
  不定期	-	1	-	-	2	1	-	-

  
  

• 2001年（平成13年）3月28日改正
  
  （越谷−北越谷間複々線化・北千住−北越谷間の複々線全通。特急「けごん」「きぬ」全列車春日部停車化。「きぬ」全列車新高徳停車化。)
  
  「きりふり」「ゆのさと」廃止。急行は「南会津」「しもつけ」のみとなる。
  
  ※急行が大削減となり「きりふり」「ゆのさと」はこれ以後全くの臨時列車でしか見ることができなくなった（新栃木ゆき「きりふり」は東武日光ゆき特急「けごん41号」に格上げ）。これにより６両編成の300系は定期運用がなくなった。また2001年（平成13年）末より「スノーパル」が300系使用の急行扱いとなり、翌2002年には「尾瀬夜行」も300系使用となりこれで快速急行は完全消滅。
  　

  	南会津		しもつけ
  	下り	上り	下り	上り
  定期	1	2	1	1

  　

• 2003年（平成15年）3月19日改正
  
  （地下鉄半蔵門線との直通運転開始。特急「けごん」「きぬ」全列車栃木・新鹿沼停車化。特急「りょうもう」全列車東武動物公園停車化。）
  
  「南会津」上り１本廃止・急行は「南会津」「しもつけ」各１往復のみとなる。
  
  ※野岩・会津鉄道直通「南会津」はついに１往復のみとなり車両も「しもつけ」と合わせ１日１編成のみの使用で済むようになってしまった。また特急「けごん」「きぬ」の停車駅増加で急行との差は新栃木停車の有無のみとなった。
  　

  	南会津		しもつけ
  	下り	上り	下り	上り
  定期	1	1	1	1

  　

  臨時運転のみとなった急行「きりふり」。2004年秋から2005年にかけては「ゆのさと」ともども久しぶりに多数運転された。 （2004-10　東武動物公園・通過中)

  　

• 2005年（平成17年）3月1日改正
  
  「南会津」の野岩・会津鉄道直通廃止で「ゆのさと」に改称。
  
  ※会津鉄道の快速「AIZUマウントエクスプレス」が鬼怒川温泉乗り入れを開始。その代わり「南会津」は新藤原止まりとされ愛称も「ゆのさと」に変更されることになった（新藤原−会津田島間には接続の6050系快速を同ダイヤで設定）。「ゆのさと」の名が定期列車に返り咲いたが最近の情勢から「南会津」の再登場はないものと思われここに野岩・会津鉄道直通急行が消滅することになった。
  　

  	ゆのさと		しもつけ
  	下り	上り	下り	上り
  定期	1	1	1	1

  　

  		北千住駅優等列車ホームで見られた乗車位置案内。 (1999-3)

• 2006年（平成18年）3月18日改正
  
  （ＪＲ新宿直通特急「日光」「きぬがわ」運転開始。列車種別・運転系統の大変更。）
  
  有料急行の全面特急化。「ゆのさと」廃止。南栗橋ゆき「きりふり」新設。
  
  ※列車種別・運転系統が大刷新されたこの改正では従来の「準急」に代わり地下鉄半蔵門線直通の「急行」が主体のダイヤとなった。この地下鉄直通の一般車による「急行」が運転されるため日光線系統の有料急行は車両も料金もそのまま「特急」に種別が変更されることになった。しかし前年定期列車に返り咲いたばかりの「ゆのさと」は結局廃止されることになった。
  また浅草 21:30発→南栗橋 22:22終着の「きりふり」が下り１本・平日のみ設定され、この列車に限り東武動物公園−南栗橋間は各駅に停車し、しかも春日部以北の乗車は料金不要となるなどＪＲ185系の新特急並みの列車の出現となった。
  　

  	きりふり		しもつけ
  	下り	上り	下り	上り
  定期	1	-	1	1

  　

  定期列車に復活も１年で消滅することになった「ゆのさと」。 同時に有料急行時代も終わりを告げた。 （2005-3　大袋)

  　

　

　

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