館林駅から東武小泉線下り列車（西小泉ゆき）に乗車し、一つ次の成島駅を出発するとやがて進行方向左手に駅の跡のような空間が現れる。
列車はその先右にカーブし、廃止駅の狸塚（むじなづか）駅跡の記念碑（前項参照）を一瞬左手に見た後、今度は左にカーブし次の本中野駅
に到着する。
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| 成島-本中野間線路沿いの駅跡のような空間。 |
(2012-4） |
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この駅跡のような空間であるが、『東武鉄道六十五年史』によると、かつて成島駅近くにあった旧陸軍熊谷飛行学校館林分校が終戦後に進駐軍
に接収され小蓋（こぶた）基地となり、同基地への物資輸送のため昭和20年（1945年）12月5日に成島−本中野間に小蓋信号所および基地への
側線が設置された、とあり、おそらくその小蓋信号所の跡ではないかと思われる。同史によると小蓋基地への大量の貨物がさばききれず同信号所
には常に200〜300両もの貨車が滞留していたほどであったという。しかし同基地への輸送は開設直後の同年12月末をピークに急減し、翌年9月1日
には側線は撤去され基地自体も閉鎖されてしまったという。
小蓋信号所は終戦直後のわずか１年たらずしか機能しなかったことになりまさに幻のような存在でもあった（なお小蓋基地跡は現在某学園と
なっている）。
他の資料や航空写真を参考に推測したのが下の概略図である。
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小泉線の停車場一覧（現存・廃止を含め）を記した資料では大抵の場合、
『館林−目車（廃止駅）−成島−狸塚（廃止駅）−小蓋信号所（廃止）−本中野−（以降略）』
という順番で記されており、さらにこれまた判で押したように「小蓋信号所は本中野駅の成島寄りに設置」という注記がされていることがある。
もしその通りだとすると小蓋信号所は狸塚駅と本中野駅の間にあったことになり、上の推測図とは一致しなくなってしまう。だが狸塚−本中野間
のわずか1キロほどの間に大量の貨車が留置されていたような施設跡はうかがえず、また小蓋基地との距離も離れたものとなってしまう。
このような疑問が生じたが、よく見ると狸塚駅の廃止は太平洋戦争開戦直後の昭和16年（1941年）12月25日とあり、一方小蓋信号所の開設は
終戦間もない昭和20年（1945年）12月5日とある。つまり狸塚駅と小蓋信号所は同時期には存在していなかったことになる。上の図の狸塚駅
の部分を指でかくしてみると確かに小蓋信号所は「本中野駅の成島寄り」であることになる。おそらく小蓋信号所は距離の近い成島駅ではなく
本中野駅の管理下にあり、そこから同駅の成島寄りという注記がなされ狸塚駅との位置関係の誤解が生じたのではないかと思われる。
※以上はあくまで推測です。そうではない、あるいはもっと詳細な情報がある、という場合はぜひご教示願います。